易きにつかず

就職してまもなく、一介の社員であった私は、あることで会社と衝突し、また組合からも攻撃を受け、孤立無縁に陥ったことがありました。


そのとき私は、高く険しい山を登っていく姿を思い浮かべました。経験も技術もないにもかかわらず、私はそびえ立つ岩山に垂直登攀を試みようとしていたのです。鋭い岩壁にひるみ、恐れ、落伍するものもあるわけですから、周囲から非難ごうごうです。


先輩からは「妥協が必要だ」、つまり山すそのゆるやかな傾斜を、集団とともに頂上をめざすという方法を勧められました。


それでも、私が前者の方法を取ったのは、自分も弱い人間だけに、易きにつき、徐々に登っていくならば、頂点を極めることをやがてあきらめてしまうだろうと考えたからです。また、安易な生き方は、私を信じてついてきてくれる人たちにとっても楽ですが、彼らに本当の幸せをもたらすことはできないとも考えたのです。


正しいと固く信じることができるならば、どんな非難があろうとも、どんな険しい道のりであっても、めざす頂に向かって、まっすぐに登っていこうと私は心に決め、その後自分にも他人にも厳しい姿勢で臨み続けました。それは決して間違っていなかったと思います。



上記の言葉は

京セラ、KDDIの設立者であり

経営破綻したJALを2年で再生させた

経営の神様と呼ばれた稲盛和夫氏の言葉です。


私は稲盛氏が多くの著書で伝えているように

人生や会社の未来は

考え方や人生観、在り方、哲学で

決まるのではないかと思い至りました。


これから毎日、稲盛氏のことば(哲学)を

自分自身のために、そしてコンパスの未来のために

全社員と共有したいと思い、ここに掲載することにします。


社員の皆さんも毎朝始業前に、このことば(哲学)を読み

繰り返し腑に落とし、自分自身の生き方としていってほしいと思います。


代表取締役社長 板橋満彦



出典

『心を高める、経営を伸ばす』

―素晴らしい人生をおくるために― 

稲盛和夫著  発行元PHP研究所